WWつらゆきのつらつらぐさWW

                                       女もすなる、映画日記といふものを、                  つらゆきもしてみむとて、するなり

『Lovely Man』ー父と娘のトランスジャカルター

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2011年のインドネシア映画。アジア各国の映画祭とか、日本では関西クィア映画祭で上映されたらしい。DVDにて鑑賞。

 

2005年に『トランスアメリカ』っていう、

トランスジェンダー性同一性障害)で性転換手術を目前にした主人公(父親)と、

そうとは知らず一緒にアメリカ横断をする青年(息子)の映画があったのだけど、

これはそのジャカルタ版てかんじ。

(今思えばこの頃のミニシアターって、ジム・ジャームッシュ信者が作った

ポール・トーマス・アンダーソン映画の亜種みたいのばっかり公開されてたな)

 

なお、ジャカルタには路面電車的な路線バス、

その名も“トランスジャカルタ”というのがあって、

この写真はその乗り場でのシーン。

 

19歳のチャハヤは4歳の時に家を出て行き仕送りだけしてくれる父サイフルに会うため、電車に乗ってジャカルタに着いた。

そして、夜の橋の上に立ってイプイという名で売春をしている父と再会する。

 

イプイははじめチャハヤを激しく拒否するが、

幼い頃と変わらず父を慕いながら、未婚かつ学生で妊娠して悩んでいる娘を、

父として受け止めようとする。

 

たった一晩だけの父娘の時間。

語り合ったり見つめ合ったりするシーンは少ないけれど、

2人の気持ちが強く結ばれていくのがじんわりと伝わってくる。

 

夜のジャカルタでは、ブラブラと歩く姿を撮るだけで

1本の美しい映画ができる。

という、「映画の魔法」のようなものを見せてくれる映画でした。

(『トランスアメリカ』が大陸横断までしたということに対する皮肉かな)

 

細かく観ていくと、

イプイ役のDonny  Damara(80年代のスター)が素晴らしいとか、

チャハヤ役のRaihaanunが、完全無欠の清純なインドネシア美少女!しかも上手い!

(と思ったら監督Teddy Soeriaatmadjaの奥さんだった。びっきゅり)

 

映像、音楽のクオリティは

インドネシア映画には珍しく(!)他国の映画にひけをとっていない!

ひらたく言えば、ダサくない!(ダサいのは決して悪い事ではないけど)

やればできるんじゃん!!と。

 

あと、ストーリー展開に関する監督の方向付けが明確で、

すごく芯がしっかりとしているから引き込まれるし、

特に売春のシーンと売春仲間の撮り方に変な遠慮も盛り過ぎ感も無くてよかった。

ジャカルタの夜の路上の一部は、結構な性のワンダーランドで、

セクシーなお姉さんも、イプイみたいな人もいっぱいいるんだよね。

 

にしても、

礼拝所でのお祈りと路地裏でのレイプが同時進行、オーバーラップするシーンは、

直球勝負すぎて観ているこっちがハラハラした~

イスラム教団体から公開に対する抗議があったらしいけど、

結局ジャカルタの1館でひっそり上映されたらしい。

監督は、この内容的にインドネシア国内での上映許可は下りないだろうから、

もともと海外で上映することを前提に作っていたらしい。

 

国内で上映される映画の幅、せまっ!

 

とにかく機会があったらぜひ観てください。

DVD持ってます。